チューリング賞受賞者のヤン・ルカン氏がMetaを離れて設立したAdvanced Machine Intelligence Labs(AMI Labs)が、35億ドルの企業前評価額で10億3,000万ドルのシード資金調達を完了したと発表しました。欧州スタートアップ史上最大規模のシードラウンドであり、NVIDIAやBezos Expeditions、Cathay Innovation、Samsung、Toyota Venturesなど多数の企業・機関が参画しています。AMI Labsは従来型の大規模言語モデル(LLM)に依拠せず、JEPA(Joint Embedding Predictive Architecture:結合埋め込み予測アーキテクチャ)を軸とした「世界モデル」AIの開発を通じて、自律型ドローンや自動運転システム、医療ロボティクスの実用化を目指します。
JEPAはルカン氏が2022年に提唱したアーキテクチャで、テキストや画像をトークンごとに逐次的に予測するLLMとは根本的に異なるアプローチをとります。世界の表面的な状態を再現しようとするのではなく、「物事の変化の本質」を抽象的な表現空間で学習するため、予測の精度と信頼性が高まると期待されています。ルカン氏はAFPのインタビューで「私は明確にパラダイムシフトが必要だという立場にいる」と語っており、現在のLLMが幻覚(ハルシネーション)を起こしやすい根本原因はアーキテクチャにあるという持論を展開しています。パリを本社とし、ニューヨーク・モントリオール・シンガポールに拠点を置く計画で、CEO就任のAlexandre LeBrun氏は「最初のプロダクトが使えるようになるまで約1年かかる」と見通しを示しています。
X上ではAI研究者たちが「LLMとは根本的に異なるアプローチ」として注目し、ルカン氏が長年主張してきたJEPAがついて大規模な資金を獲得したことへの驚きと期待が広がりました。r/MachineLearningでは「物理世界を理解するAIの実現に向けた重要な一歩」と評価する意見がある一方、「成果を出すには数年かかるだろう」という慎重な見方も見られました。Hacker Newsでは、Fei-Fei LiのWorld Labsも同時期に10億ドルを調達していることから「世界モデルへの投資ブームが始まった」とする議論が活発に展開されました。
AMI Labsの資金調達が象徴するのは、LLM一辺倒から「より信頼性の高いAI」へと業界の視座が広がりつつあることです。ルカン氏の欧州拠点という選択には、米中に偏らない「AIの第三極」として主権AIの確立を狙う戦略的意図も読み取れます。医療・ロボティクス・産業オートメーションという高信頼性が求められる分野で、研究から実用への橋渡しができるかどうかが今後の評価軸となるでしょう。
| - [Yann LeCun's AMI Labs raises $1.03B to build world models | TechCrunch](https://techcrunch.com/2026/03/09/yann-lecuns-ami-labs-raises-1-03-billion-to-build-world-models/) |
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| - [AMI Labs World Models JEPA vs LLMs | $1B Seed Round](https://www.buildmvpfast.com/blog/yann-lecun-ami-labs-world-models-jepa-2026) |