米国一般調達局(GSA)が連邦政府のAI調達に関する新規則案「GSAR 552.239-7001」を発表し、業界に大きな波紋を呼んでいます。この規則案は、政府機関が調達するAIシステムを「米国AIシステム」に限定することや、政府によるデータの完全所有権を義務付けることを骨子としており、OpenAI・Microsoft・Palo Alto Networks・IBMなどのAI大手が一斉に懸念を表明しました。
規則案の問題点として業界が指摘するのは、「米国AIシステム」の定義があいまいな点です。現代のAIシステムは学習データ、アーキテクチャ、計算インフラ、ソフトウェアスタックが複雑に絡み合っており、「どこで作られたか」を明確に区分することは技術的にも法的にも困難です。また、政府によるデータの完全所有権という要件は、SaaS型のビジネスモデルを採用する多くのAIベンダーにとって事実上の契約締結不可を意味しうる厳格な条件です。クラウドサービス調達で過去に起きた「米国製サーバー義務化」問題と類似の構造的な矛盾を抱えているとの指摘も業界から出ています。
Hacker Newsでは「政府が商用AI製品のビジネスモデルを根底から変えようとしている」という議論が活発に展開されており、AIベンダーが政府契約から撤退するリスクを懸念する声も上がっています。Redditのr/govtechでも「AIの定義があいまいなまま米国産義務化を求めるのは現実的でない」という批判が多く、クラウドサービス調達の前例を引き合いに出す意見が目立ちます。
規則案はパブリックコメント期間中であり、業界からの意見を踏まえた修正が行われる見通しです。しかし、連邦政府がAI調達に「安全保障上の国内製品優先」を持ち込もうとする姿勢は明確であり、AI業界の政府向けビジネスに今後も影響を与え続けるとみられます。トランプ政権下でのAI規制動向と合わせ、業界全体の注視が集まっています。