← 2026-04-07
Research Community 2026-04-07 Source →

AIフレームワーク「THOR」が材料科学の熱力学計算を数百倍高速化——スーパーコンピュータで数週間かかった計算をリアルタイムに

テンソルネットワーク数学と機械学習を融合させた新AIフレームワーク「THOR(テンソルネットワーク・ハイブリッド・オプティマイゼーション・リサーチ)」が、材料科学における熱力学計算を従来比で数百倍高速化することに成功しました。これまでスーパーコンピュータを用いても数週間を要していた物質内原子の熱力学特性のシミュレーションが、精度を損なわずにほぼリアルタイムで実行できるようになったとする研究成果がScience Daily誌に掲載されました。

THORが解決した問題は、物性物理学・材料科学・量子化学の分野で100年以上にわたって研究者を悩ませてきた計算コストの問題です。多体系(多数の原子が相互作用する系)における量子状態を正確に記述するには、指数関数的に増大する計算量が必要で、これが新材料の開発スピードを著しく制限してきました。THORはテンソルネットワーク手法による次元圧縮と、ジョンソン–リンデンストラウス変換(Johnson-Lindenstrauss transform)に着想を得た機械学習モデルを組み合わせることで、この計算量の爆発を抑制することに成功したといいます。

X上では科学者コミュニティから「物質科学の計算ボトルネックを打開する可能性がある」という評価が相次ぎました。Hacker Newsでは「100年来の問題」という研究者の表現の妥当性についての批判的議論も生まれましたが、計算加速の実用的な意義そのものは幅広く認められており、「新材料の設計サイクルを数年単位で短縮できる」という見方が広がっています。

具体的な応用として期待されるのは、高効率バッテリー素材の開発、量子コンピュータ向け超伝導体材料の設計、医薬品の分子挙動予測などです。AIによる科学研究加速(AI for Science)のムーブメントが続く中、THORは「計算物理のGPTモーメント」として語られる可能性があります。

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