欧州連合(EU)のAI規制法「EU AI Act(AI法)」は、2026年8月2日に高リスクAIシステムへの透明性・適合義務が本格適用される予定です。しかし、EU加盟27カ国のうち準備が完了しているのはわずか8カ国にとどまっており、欧州委員会が提案する「Digital Omnibus」による最大16カ月の延期案も並行して審議されています。グローバルに事業展開する企業にとって、規制環境が急速に複雑化しています。
EU AI Actは2024年8月に施行され、リスクレベルに応じた段階的な適用スケジュールが設定されています。2026年8月2日の期限では、医療診断・採用選考・信用審査・重要インフラ管理など「高リスク」に分類されるAIシステムに対し、適合性評価・ドキュメント整備・人間による監視体制・透明性確保が義務付けられます。これに違反した場合、全世界年間売上高の最大3%または1,500万ユーロのいずれか高い方の制裁金が科される可能性があります。
欧州委員会は2025年11月にDigital Omnibusを公表し、技術標準(ハーモナイズド規格)の整備が間に合わないことを理由に、高リスクAI義務の適用を最大でDecember 2027からAugust 2028まで延期する案を提案しています。欧州議会本会議での投票は2026年3月26日に予定されており、春のトリローグ(三者協議)を経て2026年半ばの最終採択が見込まれています。ただし「延期になるかもしれないとはいえ、コンプライアンス準備は今すぐ始めるべき。後手に回ると危険」とX上でもコンサルタントや法律専門家が警告しています。
X・Redditでの反応を見ると、グローバル展開企業への影響を懸念する声が目立ちます。Redditのr/LawSchoolでは「米国は州法乱立、EUは延期議論。マルチリージョン展開企業の法的リスクが複雑化している」との分析が共有されました。日本では2026年AI基本法が施行予定、韓国・ベトナムでも同年にAI専門立法が施行されるなど、アジア太平洋地域でも規制の波が来ており、特定地域への最適化では対応しきれない段階に差し掛かっています。
延期が実現するかどうかにかかわらず、高リスクAIを業務に組み込んでいる企業には今後2年以内に重大な義務が課されることは確実です。現時点で既存のAIシステムのリスク分類を行い、コンプライアンス体制の骨格を整えておくことが、最終的なコスト削減につながると専門家は口をそろえています。