米一般調達局(GSA:General Services Administration)が提案したAIシステム調達に関する条項「GSAR 552.239-7001」に対し、OpenAI・Microsoft・IBMをはじめとする業界団体が強く反発し、GSAはRefresh 31(直近のGSAR改訂サイクル)への組み込みを断念してRefresh 32に延期することを表明しました。
問題の核心は二点です。一つ目は「政府がAIシステムへの全入力データの所有権を持つ」という条項です。企業が政府向けAIサービスを提供する際、ユーザーが入力したプロンプトや文書をすべて政府財産として扱うことを義務付けるものと解釈されており、AI企業にとってはモデル改善のためのデータ利用や、非政府向けサービスとの技術共有ができなくなる可能性があります。二つ目は「政府向けカスタム開発の知的財産帰属」条項で、政府発注で開発・改良した技術の知財が政府に帰属するという内容です。
X上では「政府がAIの全入力データを所有するなら、誰もGov向けにAIを売れなくなる。業界の危機感は正当」という声が広まっています。Hacker Newsでは「政府調達の透明性とAI企業の知財保護のバランスをどう取るか」という難問として、法律・技術の両面から議論が展開されています。政府の立場から見れば、国家安全保障や市民データの扱いに関して企業に依存しすぎることへの懸念は理解できますが、条項の文言が広範すぎるとの批判は業界全体で共有されています。
今回のGSAの方針転換は、AI政策が「どう規制するか」だけでなく「政府がどうAIを調達・利用するか」という実務レベルでも整備が追いついていないことを示しています。Refresh 32での条項見直しでは、業界との対話を経た修正が期待されますが、AI入力データの所有権という根本的な問題の落としどころは依然として不透明です。米政府のAI調達が業界との関係をどのように再構築するかは、グローバルな政府向けAI市場全体の方向性にも影響を与える問題です。