トランプ政権が3月20日に発表した「国家AI立法フレームワーク(National Policy Framework for Artificial Intelligence)」が4月、本格的な議会審議に入りました。AI規制において連邦法が州法を上書きする「プリエンプション(先占)」条項の是非が最大の争点となっており、AI業界ロビー団体と市民団体の対立が激化しています。新規AI規制機関は設置せず、既存の省庁が所管する方針を採っている点も特徴です。
ロープス&グレイ法律事務所の解説によれば、同フレームワークは「AI利用が合法的な活動に対して、AIなしで行う場合と同様の規制を州が課すことを妨げる」と定めており、実質的に州独自のAI規制を広範に封じる内容です。連邦政府が統一規制を設けることでイノベーションを促進するという考え方に基づいていますが、民主党議員からは「州民保護の権限を奪うものだ」という批判が上がっています。
議会では対立する2法案が浮上しています。共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員が3月18日に公表した「TRUMP AMERICA AI Act」はフレームワークの骨格を法制化しようとするもので、一方、民主党のビーヤー下院議員らが提出した「GUARDRAILS Act」はトランプ政権の大統領令を撤廃し、州レベルのAI規制を守ろうとするものです。子ども向けオンライン安全法(KIDS ONLINE SAFETY ACT)やAIによる肖像権侵害を規制するNO FAKES ACTなど関連法案も同時進行しており、議会のAI立法は複雑な様相を呈しています。
AI業界ロビー団体「Innovation Council Action」は規制反対に1億ドルを投入する意向を表明し、X(旧Twitter)では「産業界と市民団体の対立が激化」という声が多数上がっています。r/artificialでは「州法を連邦が上書きするのは誰のための保護か」という批判的議論が活発で、「統一規制の方が企業には扱いやすい」という産業界寄りの意見と対立しています。Hacker Newsでは欧州AI法との比較スレが人気を集め、「米国は規制なきイノベーション優先とEUの差が広がっている」という分析が多く見られます。
米国では現在、カリフォルニア州・コロラド州・イリノイ州など十数州が独自のAI規制法を整備・検討中です。プリエンプション条項が成立すれば、これらの州法が連邦法に抵触するとして無効化される可能性があります。支持者は「企業が50州それぞれの規制に対応する負担を減らせる」と主張しますが、批判者は「最も弱い規制水準に全体を引き下げることになる」と懸念します。AIが医療・雇用・刑事司法など生活の基盤に深く関わりはじめた今、誰がどのルールでAIを管理するのかという問いは、今後の選挙や法廷でも繰り返し問われることになりそうです。