米国連邦調達局(GSA)が3月6日に公表した初のAIシステム向け連邦調達条項案「GSAR 552.239-7001(AIシステムの基本的セーフガード)」に対し、米国商工会議所をはじめとする主要IT業界団体が強く反発しています。政府側がAI出力の無制限利用権を求める一方、そのデータをモデル訓練に使用することを禁じる非対称な構造が、商用AIプロバイダーのビジネスモデルと根本的に相容れないと指摘されています。
業界が最も問題視しているのは2点です。ひとつは、政府がAIシステムの出力に対して無制限の利用権を得るという要件です。契約を結んだAIベンダーは、政府が出力データを再利用・再配布・改変することを制限できなくなります。もうひとつは、その出力データをモデルの継続学習に使うことを禁じるという矛盾した条項です。つまり、企業は最も価値ある学習データへのアクセスを失いながら、無制限の使用を許諾しなければならない構図になっています。
米国商工会議所はコメント期間中に提出した意見書の中で、この条項が「競争を制限し、政府のコストを増大させ、商用AIプロバイダーの連邦市場参入を阻害する可能性がある」と警告しています。連邦ニュースネットワークの報道によれば、中小規模のAIベンダーほど条項対応のコスト負担が重く、事実上の参入障壁になりうるとの声も出ています。
r/govtechでは偽請求法(FCA:False Claims Act)への露出が特に懸念されています。「AIを活用した政府契約はすべて潜在的な刑事リスクを抱えることになる」との指摘が上位のコメントとして注目を集めました。X(旧Twitter)でも「連邦調達のゲームチェンジャー」との見出しが多くシェアされています。Hacker Newsでは「政府全体のAI調達規則としては初のもので、企業AIベンダーへの影響は計り知れない」という分析が支持を集めました。
GSAは当初3月20日としていたコメント期限を4月3日まで延長し、条項のMASリフレッシュ31への組み込みを見送っています。今後はリフレッシュ32での導入が検討される見込みです。政府とAI産業の関係を規定する最初のルールが固まるまでには、まだ曲折が続きそうです。