OpenAIは5月11日、EU企業・政府機関・EU AIオフィスなど欧州の審査済みサイバーセキュリティチームを対象に、防御専用AIモデル「GPT-5.5-Cyber」の限定プレビューを開始したと発表しました。セキュアコードレビュー・脆弱性トリアージ・マルウェア解析といった防御ワークフローに特化したこのモデルは、汎用モデルとは異なるアーキテクチャ調整が施されており、攻撃的用途への流用を制限する設計になっているとされています。
CNBCの報道によると、今回の取り組みはAIを外交・安全保障政策のツールとして活用する新しい形態として注目されています。EUがOpenAIを「パートナー」として扱うことで、欧州独自のAI規制(EU AI法)の適用において有利な交渉ポジションを確保する狙いがあるとみられます。一方、AnthropicのセキュリティAIモデル「Mythos」については、EUとの交渉が「まだ同じ段階にない」と報じられており、OpenAIが欧州市場での先行者利益を確立しようとしている構図が浮かび上がります。なお、GPT-5.5-Cyberへのアクセスは現時点で限定的であり、一般ユーザーや一般企業は対象外です。
X(旧Twitter)では「AIの地政学的分断が加速している」「EUが独自AI政策でOpenAIを引き寄せている」といった分析が広まり、デュアルユース(軍民両用)AI外交の新形態として注目を集めました。Redditのr/EuropeanTechでは「AnthropicがMythosを公開しない理由」への憶測が飛び交い、デュアルユースAIの規制議論も活発化しています。Hacker Newsでは「サイバーセキュリティ専用モデルの公開はソフトパワー外交の一形態だ」という視点が多くの支持を集めました。
AI能力が国家安全保障と直結するようになる中、「どの国の企業のAIを使うか」はインフラ選択と同等の戦略的決断になりつつあります。OpenAIの今回の動きは、技術競争と地政学を組み合わせた新しい市場開拓モデルの先例となりそうです。