人間の脳神経回路をマッピングして「脳のコアアルゴリズム」を解明することを目指すAIスタートアップFlourishが、Jeff Bezos・Lux Capital・GV(Alphabetのベンチャー部門)・Catalio Capitalなどから5億ドルを調達し、評価額25億ドルで登場しました。目標は現行AIシステムが消費するギガワット規模の電力の数万分の1、わずか20〜50ワット(ノートPCと同程度)で動作するAIシステムの開発で、急速に深刻化するAIの電力危機に神経科学的アプローチで挑みます。
Hoodlineの報道によると、Flourishを共同創業したのはThomas ReardonとRob Williamsです。ReardonはマイクロソフトでInternet Explorerを開発した人物として知られていますが、AI業界でより直接的に注目される実績は、2019年にMetaが推定10億ドル超で買収した脳コンピュータインターフェース企業CTRL-labsの創業です。WilliamsはAmazon上位幹部(S-team)出身です。Flourishが開発する「Cortex AI」は、実際のニューロン回路をマッピングするコネクトミクス(神経結合の網羅的解析)技術をもとに、脳の情報処理の根本原理を特定し、それを計算アーキテクチャに実装しようとするものです。ベゾスは当初から出資を表明し、後から持ち分をほぼ2倍に積み増したとされています。
SiliconAngleによると、現在の主流なAI推論システムは大規模データセンターで数百キロワットから数メガワットを消費します。それに対しFlourishが掲げる20〜50ワットという目標が実現すれば、AIの経済的コストと環境フットプリントを根本から変える可能性があります。AI電力消費が電力網への負荷として社会問題化する中、グリーン電力投資やデータセンター冷却技術の改善とは異なるアプローチとして投資家の関心を集めています。
X上では「ベゾスが脳コピーに賭けた」として話題騒然となりましたが、ニューロサイエンス研究者からは「コネクトミクスでAGIを実現するのは途方もなく困難」との冷静な反論も見られます。r/singularityでは「これが実現すればAI電力問題が一気に解決する」と興奮する声がある一方、「夢物語に5億ドルは多すぎる」という懐疑論も根強くあります。Hacker NewsではCTRL-labs創業者Reardonの実績に着目した議論が行われており、「前回Metaに10億ドル超で売却した実績がある人物の次の賭けとして真剣に評価すべき」という見方が広まっています。
現行のトランスフォーマーベースのAIアーキテクチャが計算スケーリング則に基づく電力消費の増大を前提としているのに対し、FlourishのアプローチはアーキテクチャそのものをAIの電力問題の解として提示しています。実現可能性への懐疑論は多いものの、Bezos・Lux・GVという顔ぶれが揃った5億ドルの調達は、少なくとも投資家の一部が長期的な賭けとして脳模倣型AIを真剣に評価していることを示しています。